Adobeイラストレーターで英語を流し込むための設定解説

do not touch tracking or kerning!

翻訳を仕事としてはじめてすぐ気づいたことは、訳文が英語としてどれだけ自然だとしても、成果物のデザインも自然じゃないとダメです。

当時の多くの仕事は、印刷物(パンフなど)の場合、パンフにある日本語が記載されているワードファイルに、英訳を加えていって納品していました。そしてクライアント側で英語が分からないデザイナーが英訳をイラレにコピペすることで、コピペミスがたくさん起こったり、日本語用のフォントも使われたりすることで、せっかく翻訳した文が中途半端でイラレデータに反映されてそのまま印刷されたというのが数多くありました。

そうならないように、訳文を印刷や公開する前にチェックするというサービスを提供し始めました。でもやっぱり英語ネイティブとして、英語のデザイン論とアドビのイラレを勉強して、自分でイラレ入力とDTPを提供するのが時間的かつ費用的にベストだと気づき、弊社でDTPサービスも提供し始めました。

結論から言うと、外国語のコンテンツを作るときは、その言語のネイティブのデザイナーに頼むのが一番手軽で確実ですが、英語ネイティブで日本語もわかるデザイナーがまだ少なくて、予算的に余裕がないときは社内でカバーするしかない場合ももちろんあります。

ここで、英語の文章をイラレで取り扱うときに必ず使わないといけないイラレの設定と絶対使っちゃいけない設定をまとめて説明します。お役に立てればうれしいですけど、もし最終的にネイティブに見てもらいたいなら、ぜひご連絡ください。

中国語、韓国語、タイ語などももちろん独自のデザインルールもありますが、この投稿は英語のみについて説明します。後日にほかの言語の設定についても投稿を書く予定です。

もっと詳しく勉強したい方は、フォントのMORISAWAが無料で提供している「MORISAWA PASSPORT 英日韓組版ルールブック」が非常に細かいところまで書いておあり、おすすめです。

フォント

まずフォントから始めます。日本語用のフォントはもちろんローマ字が含まれていますが、そのローマ字は日本語に合わせてデザインされているので、英文にはふさわしくないです。ちょっとだけ違和感あるフォントもあり、非常にかっこ悪いフォントもありますので、何よりも、英文をイラレで組版している場合、英語用のフォントを使いましょう。

ただ、作業中で問題になるのは、英語を流しこむ前にフォントを変更しようとしても、英語用のフォントに漢字などが入っていないので、日本語になているテキストは変わりません。一番最後に英語のフォントを変えようとすると、英語の微調整がたくさん必要になってくるので、全体的なバランスが把握しにくいです。一番理想なのは、日本語も入っている、英語でもきれいに見えるフォント。この理想に近い、弊社で使っているのはgoogleが無料提供しているNotoというフォントファミリー。

Noto Sans

これはNoto Sansです。

Noto Sans CJK JPの全ウェイト

Noto Sansというフォントが、どの言語でも、どの文字でも似たようなデザインや線の太さなどが対応するという目的で作られた無料フォント。Adobe Fontsにも入っています。

英語も日本語も対応するのは、Noto Sans CJK(C=中国語、J=日本語、K=韓国語) JPというもので、その中に7つのウェイトがあります。最初からフォントをNoto Sansに変える(もしくは日本語版をNoto Sansで作る)と、途中の作業がしやすくなります。

ただ、ご覧の通り、Notoというフォントは統一性重視で特色がそれほどないので、最後に見出しなどをもう少し独特なフォントに変えるという手もありです。

アドビCCに加入されているのであれば、すべてのAdobe Fontsが使えます。何千個の英語のフォントが使えることになっていて、serifやsans serifなどで検索することでイメージしているフォントを探してみてください。

そのうち英語のフォントの組み合わせや斜体(イタリック)などについて投稿を書きます。できましたらここにリンクを貼ります。

でもたいていのものは、Noto Sansを使って、ウェイトを変えることでメリハリをつけるのが十分です。

フォントの使い方についてもっと詳しい投稿を書く予定でできましたらここにリンクを貼ります。

文字の設定

フォントを決めたら、次はイラレでの文字の設定を説明します。

文字の設定

まず設定しないといけないのは「言語設定」。これが「英語」になっているか確認してください。英国と米国の英語もあり、イラレのスペルチェックの機能とハイフネーションの設定と関係してくるんですけど、普段のものはどっちも大丈夫です。

「フォントサイズ」や「行送り」は自由に変えてもいいですが、「垂直比率」、「水平比率」、「カーニング」、「トラッキング」は絶対、ゼッタイ触らないでください。日本語は文字自体の比率や文字の間の間隔を変えてもいいですが、英語のフォントの比率や文字の間隔が慎重に決まってあるもので、(特に長文の場合)ちょっとでもこの設定をいじってしまうと、非常に残念な状態になってしまいます。そのフォントを作った人もなく場合があります。

自分で英語を流し込む前に、ファイルのテキストを全部選択して、比率を「100%」にして、カーニングとトラッキングを「0」にします。

唯一カーニングとトラッキングを触っていいのは見出しの微調整やグラフィックデザインの場合のみ。基本的に、比率を触るのは「アーティスト」レベルの人で、「デザイナー」は触ることがない。

1%でも、変えないでください。

お願い。

ただ!

どうしても英訳が長すぎる場合(日本の地図でよくある問題)、「Condensed」という単語がついているフォントがあります。Noto Sans Condensedもあります(CJK版がないけど)。Condensedは「細くした」という意味で、condensedのフォントは普通のフォントより文字幅が狭いです。長文で使うと読みづらくなりますが、地図や見出しだと問題はありません。

フォントサイズ

日本語を英語に翻訳するとき、同じフォントサイズであれば、英訳がだいたい日本語の原稿より1.3~1.5倍長くなります。テキストエリアの大きさが調整できなくて、文字の比率を変えれないなら、先ほど説明したcondensedのフォントを使うか、フォントサイズを日本語より小さくしてください。英語の1文字の画数が日本語より少ないので、日本語のフォントサイズの約80%にしても(日本語が10pt→英語が8pt)日本語とほぼ同じ程度で読めます。

これでも英訳が入らない場合は、英訳を短くするか、周りのレイアウトを少し再調整して、テキストエリアを少し拡大するのがベスト。

比率は絶対触らないでください。

段落

イラレは非常に大事な設定を「段落」の窓で隠しています。ここで説明します。

「段落」パネルでまず大事なのは、右上が「オプションを表示」になっているなら、そちらをクリックして、禁則処理や文字組みの設定が表示されます。

左揃え、両端揃え、どっちがいい?

日本語は単語の途中で改行してもそれほど違和感がないんですが、英語ではハイフンを使って単語の途中で改行してもいいんですが、ハイフンを使いすぎると逆に読みにくくなります。

なので、日本語だと左揃えでも両端揃えでも、それほど見た目変わらない場合が多いですが、英語だと左揃えだと段落の右側がめっちゃギザギザになる場合がありますが、ギザギザでもデザイン的に問題は特にないです。

もう一つ日本語と違うところは、両端揃えの場合は、日本語が字間の間隔を調整して両端を揃えますが、英語はほとんど文字の間ではなく、単語の間の間隔だけを調整します。こうなると、段落の幅が狭くなると、単語間の間隔が非常に広くなる時もあります。

英文のアポストロフィーが全角になっているんだけど。。。

英文をイラレに流し込むとき、ときどき英文のアポストロフィーが半角ではなく、全角の文字の表示表示されます。半角の文字を入力しても、「it's」のような感じで表示されます。この解決方法は、「文字組み」を「なし」にするだけ。

もう一つの「文字組み」を「なし」にする必要な理由は、段落が両端揃えの場合になります。上の右揃えvs両端揃えのところで説明がある通り、両端揃えの場合、日本語だと文字の間で行の長さを調整しますが、英語では、文字ではなく単語の間で行の長さを調整します。

文字組みの設定の違い

上の例の左側の3段落目のCurabiturから始まる行が特にひどくて、非常にかっこ悪いです。文字組が「なし」になっていても、単語の間のスペースが広いので、ハイフネーションを使うか、段落の幅を調整するか、文章を少し書き直すことで対応するのがベストです。

非常に分かりにくい設定だけど、これだけで解決されます。

英語と関係ないので、「禁則処理」も「なし」でお願いします。

「ハイフネーション」というチェックボックスもあり、これを有効にすると、英単語の途中で自動的に改行することになりますが、単語途中の改行が多過ぎるとまた不自然になるので、基本的に無効にしておいた方がいいです。

アドビ段落コンポーザーとは

もう一つの大事な設定は、右上のハンバーガーメニューにある「Adobe日本語単数行コンポーザー」と「Adobe日本語段落コンポーザー」。こちらの設定の説明はちょっとややこしいですが、イラレが文字や単語のレイアウトを自動的に微調整するとき、「行」単位か「段落」単位で調整するという設定になります。

具体的に言うと、英語の場合は段落の最後の行に短い単語一つしかないより、段落の他の行で調整して、段落の最後の単語がその上の行に上がる方がデザイン的にいいです。

「Adobe日本語単数行コンポーザー」だと、イラレが行単位で文章を調整します。「段落コンポーザー」だと、イラレが段落ごとで文章のレイアウトを調整します。もう一つの効果は、文章が左揃えの場合、単数行コンポーザーだと右側がかなりギザギザになってしまうときがあるけど、段落コンポーザーは両端揃えほどではないけど、ギザギザを少しマシにしてくれる場合もあります。

単数行コンポーザーvs段落コンポーザー

つまり、見出しなどの短文は単数行コンポーザーが良くて、段落形式のテキストは段落コンポーザーが良い。

インデント

日本語の字下げと同じよう、英語も複数の段落があるときはインデントをする場合が多いです。インデントする幅は決まっていないけど、半角二文字分ぐらいで十分です。

最後に

設定をこの投稿通りにしても、結局デザイン的なことなので、ネイティブの感覚があり、やっぱり印刷や公開前のネイティブチェックが必要です。ただ、普通のネイティブチェックだと文法的なことしか確認しなくて、デザインも含めてチェックするようにお願いしましょう。

アドアストラでは、ネイティブチェックだけでなく、代わりに流し込みとDTPまでしております。日本語のイラレデータだけ提供していただければ、翻訳、流し込み、DTP、チェックまで全部弊社で準備して、納品したら、御社の作業は印刷するだけ(弊社で印刷まで対応できる場合もあります)

お急ぎの案件なら、一番早い選択肢がアドアストラに丸投げなのでぜひご連絡ください!お見積りと納品日をすぐ準備いたします。info@adastra.co.jpまでお気軽にご連絡ください。

Jason D. Morgan

Jason D. Morgan

株式会社アドアストラの代表。2006年に来熊してから多数の県内、九州内の翻訳・通訳案件を携わってきた。社内のイラレ担当。フォントこだわり強め。